オール・ブラック - α - 脳//Nous (前編)

オール・ブラック
- α -
ノウス
2010(ねん)(がつ)19(にち)
場所(ばしょ)不詳(ふしょう)
時期(じき)不明(ふめい)
(ぼく)らは()(とき)(なに)()るだろう?」
その言葉(ことば)(ぼく)(うご)出来(でき)ずにながら、思考(しこう)()かんでた。そうながら、この(しろ)いと灰色(はいいろ)(そら)をずっと(なが)(つづ)けてた。この景色(けしき)(ぼく)にとって、いつからかと(なに)があったのか()らずに、目覚(めざ)めた(とき)からの(はじ)めての風景(ふうけい)だった。その言葉(ことば)(ぼく)にとっては(はじ)めての(かんが)(こと)()らないが、それはただ(ぼく)本能(ほんのう)が「(ぼく)()きているか?」と(おし)えた。
だがね()になった。(ぼく)らを()(とき)(なに)をみる?(あたま)(よわ)すぎて、(いま)疑似体験(ぎじたいけん)できない。その問題(もんだい)未回答(みかいとう)まま。でも(ぼく)(いま)この無限(むげん)な、それなのに虚無(きょむ)宇宙(そら)(なが)出来(でき)るって(こと)(たし)かに、「(ぼく)()きている」。そう()かると、自分(じぶん)(からだ)もずっと(なに)固体(こたい)地面(じめん)(いた)ないまま(こと)()づいた。その(とき)まをずっと()っていて、(ぼく)はただ(まぶた)(まばた)くだけ。そして()づいたんだ、これは落下(らっか)ではなく、(なに)(べつ)を。
それに、(ぼく)(からだ)()れている。身体(しんたい)全体(ぜんたい)(うるお)布地(ぬのじ)(つつ)まれている。雨粒(あめつぶ)(ぼく)(かお)()ちそして(はず)んで、その(たび)にこの()れている(ぬの)雨粒(あめつぶ)()う。この()がいてると()がっている()れていく感覚(かんかく)は、(ぼく)一人(ひとり)(あらし)(うみ)浮流(ふりゅう)している(こと)()づいた。
しばらく(あと)(みみ)発動(はつどう)(はじ)めた、(ぼく)()こえる(こえ)(そら)(おく)雨粒(あめつぶ)(うみ)()()がりの(おと)しか()こえない。音楽(おんがく)ではなくても、その(おと)はなんか(うつく)しく()こえてる。たまに、(うみ)(ぼく)(なさ)けているかと(おも)う。なぜなら(あらし)(なか)でも(なみ)(つよ)いでも、この(うみ)(つよ)(なみ)(ぼく)()()むこと一度(いちど)もない。
(ぼく)はいつでも(おぼ)れられる、だがこの(うみ)(たくら)みがある()たい。理論的(りろんてき)には、(ぼく)(からだ)(おも)さは海水(かいすい)(ひそか)(つらぬ)(こと)()りない、それが(ぼく)(おぼ)れないの理由(りゆう)。しかし(ぼく)は、(なに)かが(うご)いている(こと)(かんが)えるのも()まれられない。
正直(しょうじき)、この事態(じたい)から(もぐ)るのも(うたが)っている。(ひろ)(ところ)一人(ひとり)で、(こえ)()すでも、(ぼく)悲鳴(ひめい)(だれ)かに(とど)けても(おも)えない。
「...」
それをやってみた。(ぼく)(こえ)()()ても、(なに)()てこなかった。この事情(じじょう)(つら)いさも、(ぼく)(つつ)()れている(ぬの)(さむ)さも、(いや)(けい)(なみ)のユラリと(あらし)子守歌(ララバイ)も、そして(あらし)(かく)している(てん)()(そら)()れてるの白黒(キアロスクーロ)も、(ぼく)(よわ)(からだ)(ねむ)いを(あらが)えない。(ぼく)(ねむ)りと()てない(たたか)いに()ちた。
「...」
(だれ)かがいるぜ!」
「...」
(はや)(たす)け!」
「...」
「せーのっ!!」
「...」
「アイツ()きている?」
(いき)はあるか?」
「なんでこんな(ところ)に?」
「...」
「だめだ!心臓(しんぞう)鼓動(こどう)(よわ)すぎっ!!」
「...」
「...」
「...」
「もう(なに)出来(でき)ない、あとは(かれ)次第(しだい)だ。」
「...」
(ゆめ)かと(おも)った、(ぼく)(ゆめ)のない()むりの(なか)に、(ぼく)末梢聴覚(まっしょうちょうかく)騒音(そうおん)()こえた()がする。春眠(しゅんみん)なのに、(からだ)作動(さどう)している。だけどアレは(ぼく)()こすのも()りない、むしろ(ゆめ)()(はじ)まった。現実(げんじつ)()う、(いた)ましい(とき)(なか)にやったのない(こと)経験(けいけん)する、ただの(ゆめ)ではなく、この(ゆめ)はリアル()ぎて(ぼく)()()めた感覚(かんかく)をする、それに(ぼく)は「どっちがリアルかとどっちがリアルじゃないか」を見分(みわ)ける(こと)(つら)くになった。
(まぶた)()けると、(ぼく)目玉(めだま)(ぼく)(まえ)木造(もくぞう)(つくえ)(もく)する。その(あいだ)(ぼく)(うで)肘掛(ひじか)けに(いこ)いてるで椅子(いす)(すわ)っている(こと)()づいた。ゆっくり(あたま)()げて、いきなり(すこ)しの()らりを(かん)じた。(ぼく)(すこ)(まわ)した、それで(ぼく)回転椅子(かいてんいす)(すわ)っている(こと)()かった。
目覚(めざ)めたか?」
(ひと)つの(こえ)(ぼく)(おどろ)かせた、その(こえ)原因(げんいん)()つけるために、(しば)(ぼく)はジロジロ()()いた。だがその(こえ)()つけることさえ、(ぼく)(ひと)異様(いよう)(こと)()つけた。(ぼく)がいるこの場所(ばしょ)は、まさにどこにもない。椅子(いす)(つくえ)(ぼく)のある場所(ばしょ)(ひろ)部屋(へや)での(ゆか)(そこ)なしの(くろ)でと天井(てんじょう)(そこ)なし(しろ)でと(かべ)は、もしあるでも、その(くろ)(しろ)階調(かいちょう)だった。
(おび)えてないで、(ぼく)(きみ)屑付(くずつ)けない(こと)(おぼ)えてください。」
(ぼく)(ぼく)(すわ)っている椅子(いす)からふいっと()った、またその(こえ)原因(げんいん)(さが)す。一度(いちど)周覧(しゅうらん)した、(うし)ろからまた(うし)ろまで、だが無駄(むだ)だった。(ぼく)はこの場所(ばしょ)一人(ひとり)だけ。
「どうぞ(すわ)って―――(くん)(すべ)てを説明(せつめい)する。」
(ぼく)をテッキリ()()かった、今度(こんど)はその(こえ)(うし)ろから()たのは(たし)かから。そして(つくえ)()こうにあった(ひと)つの(なぞ)影法師(かげぼうし)()ると目玉(めだま)(ふく)れた。(かれ)全体(ぜんたい)(やみ)(つつ)まれて、(かれ)実体(じったい)()(つら)い。だが(かれ)影法師(かげぼうし)から、(かれ)は170CM(センチ)くらいと白衣(はくい)()るは()かった。
「って、アイツ、(ぼく)のこと(なん)()んだ?」
(かれ)(ぼく)()ぶのは(たし)か。(かれ)()った(こと)(すべ)()こえた、だが何度(なんど)でもリワインドしてみても、(ぼく)名前(なまえ)さえ()こえなかった。
(きみ)我々(われわれ)計画(プログラム)参加(さんか)したいですてなぁ――」
(ぼく)(こと)(なん)()んだ?!」
(ぼく)()()がった、そして(つくえ)(めぐ)(ある)く。しかし(かれ)姿(すがた)(つか)()たら、(ぼく)()はただ(かれ)形体(けいたい)()ぎるだけ、幽霊(ゆうれい)(つか)めるように。(ぼく)(ゆび)(かれ)姿(すがた)()瞬間(しゅんかん)に、(かれ)存在(そんざい)はバット()えた、また(ぼく)はジロジロ()()かいて。(かれ)姿(すがた)()えてしまっても、(かれ)(こえ)はまだ(ぼく)(うし)ろから()こえてる。
「――我々(われわれ)(きみ)感謝(かんしゃ)する。この計画(プロジェクト)成功(せいこう)したら、すごい(こと)()たす(こと)(しん)じて。」
(ぼく)はまた(まわ)ったら、この空間(へや)論理(ろんり)(ゆが)んだ(こと)()つけた。(ぼく)(めぐ)(ある)いた(つくえ)(ぼく)からは(すく)なくとも四歩(よんほ)くらいはず。だが()()かったらその(もの)(ぼく)(まえ)にあった。(おそ)れてた、(ぼく)一歩(いっぽ)退()かけた。だが(ぼく)太股(ふともも)(なに)かの(かた)いものとぶつけて、バランスを(うしな)った。(ぼく)個体(こたい)地面(じめん)(ころ)ぶを準備(じゅんび)した、けれど(ぼく)(ころ)ぶは中途(ちゅうと)()まった、(ぼく)(べつ)(もの)(たお)()かった、あの回転椅子(かいてんいす)に。
この現象(げんしょう)(ぼく)にビックリをさせた。過呼吸(かこきゅう)(はじ)まった、(はな)だけでもなく、(くち)からでも。すぐに()()くべきのは()っている、それから(くち)()めた。(きゅう)呼吸(こきゅう)パタンを変化(へんか)するのは唾液(だえき)()()んでしまった。皮肉(ひにく)(ぼく)(むせ)られた。けど(たす)かった、(ぼく)(すこ)()()いた。
しかし(ぼく)はまだ(なに)()こるのは全然(ぜんぜん)()らない。「()きていないのか?」ほど(うたが)っている。正直(しょうじき)この空間(へや)も、この椅子(いす)も、この(つくえ)も、その幽霊(ゆうれい)(つか)める感触(かんしょく)も、自分(じぶん)浸液(しんえき)(むせ)られてたの感覚(かんかく)も、そしてこの椅子(いす)()ちる(かん)も、(すべ)ては(ゆめ)にはとてもリアル()ぎる。
(いま)からキミはこの施設(しせつ)()むことになる。キミの(のぞ)(もの)可能(かのう)なら()げる。だが我々(われわれ)はキミが(ひつ)(よう)()(あい)には覚悟(かくご)()しい。」
色々(いろいろ)()りたいが、(ぼく)(こと)(なん)()んだとか、(かれ)()った「プログラム」の意味(いみ)とか、(かれ)正体(しょうたい)とか。でも()くのはもう(あきら)めた。(いま)一番(いちばん)()しいのはここからを()すこと。
「たまには(きみ)直接(ちょくせつ)にチェックする。(たし)かなスケジュールはないが、散発的(さんぱつてき)にやります。」
(だま)れ!トットト(ぼく)()してくれ!!」
(ぼく)全力(ぜんりょく)(さけ)んでた。だけど(かれ)反応(はんのう)しなかった。むしろ(ぼく)(ぼく)大声(おおごえ)(ひび)かないことを()づいた。この空間(へや)無辺(むへん)のように。
「―で、(いま)はこれくらいですね。我々(われわれ)定員(ていいん)(きみ)(きみ)部屋(へや)(おく)ります。(なに)かを()しいがあったら、()らせてください。それでは、ぜひ、よろしくお願いします。」
もう我慢(がまん)できない、この部屋(へや)()()めるならいや。(さけ)びたい。(はい)(こわ)すほど(さけ)びたい。(ぼく)(すわ)っている椅子(いす)から()()がった、そうやってながら、()(つくえ)(おもて)をバダンと(たた)いた。
「この(つんぼ)ものメ!(ぼく)()してくッ―――」
一瞬(いっしゅん)だけで、(なに)かが(はじ)まったのを(かん)じた。今度(こんど)は「どっちがリアルかどっちがリアルじゃないか」ハッキリ()かる。この感覚(かんかく)目隠(めかく)しながら飛行機(ひこうき)から()とせた感覚(かんかく)()ているもの。
「―――れ!!!」
(ゆめ)最後(さいご)にやった(こと)(つづ)けるままで(ぼく)目覚(めざ)めた、全力(ぜんりょく)大声(おおごえ)()している。すごく大声(おおごえ)()して、その5(びょう)くらい(ぼく)(こえ)だけしか()こえない。この変換(へんかん)(ぼく)(すこ)しまごついたけど、でも(あたら)しい現場(げんじょう)()れるのは何秒(なんびょう)だけで()かった。
(さけ)(あと)ですぐ、(ぼく)視聴覚(しちょうかく)()めた。まずはここはどこか確認(かくにん)しないと。いま、(ぼく)(しろ)部屋(へや)(なか)にいる寝台(しんだい)(すわ)っている。この部屋(へや)には一床(いっしょう)寝台(しんだい)と、一対(いつい)椅子(いす)(つくえ)と、一面(いちめん)(かがみ)、そしてそのとなりに一着(いちちゃく)コートと(くすり)戸棚(とだな)
なんか(あたま)(すこ)しクラクラすると(かん)じた。それでこの部屋(へや)(ふね)一部(いちぶ)()づいた。そして(あわ)ててな足音(あしおと)をドンドン()こえてる。この部屋(へや)(とびら)がない戸口(とぐち)があって、その戸口(とぐち)はドレープで()めて。
そとの足音(あしおと)(ちか)づくながら、(ぼく)本能的(ほんのうてき)反応(はんのう)した。この部屋(へや)(なに)かが武器(ぶき)にされる(もの)はあるかと(さが)した。だけど使(つか)えそうな(もの)()つからない。その足音(あしおと)()いたまで、(ぼく)素手(すで)のまま。
(きゅう)にドレープの(とびら)()けた、集中(しゅうちゅう)武器(ぶき)(さが)してからその戸口(とぐち)()れた。あそこに二人(ふたり)(つよ)いそうな(おとこ)がある、(かれ)らは(ぼく)()(にら)めている。
「オイ!ソイツ目覚(めざ)めたぞっ―――」
その(おとこ)大声(おおごえ)()した。大声(おおごえ)()したが、(ぼく)(かれ)(かお)(まくら)()げたで(かれ)(もだ)させた。自分自身(じぶんじしん)まで(おどろ)いた、(ぼく)()げた(まくら)(かれ)(うし)ろの戸口(とぐち)まで(たお)して(つよ)かった。そうして、もう一人(ひとり)(おとこ)乱暴(らんぼう)(かお)(ぼく)衝撃(しょうげき)()けた。(かれ)(さく)はだいたい()める、(かれ)(ぼく)寝台(しんだい)()する。
(かれ)(ぼく)(いた)(まえ)に、(ぼく)(かれ)(かた)()()りた、右足(みぎあし)(かれ)左肩(ひだりかた)()む。自分(じぶん)(おも)さを使(つか)って、(かれ)(うし)ろに(たお)したいが、結局(けっきょく)(ぼく)体重(たいじゅう)(かれ)()(やぶ)るのは()りなかった。けどこのままで(かれ)(かた)()りでも(かれ)十分(じゅうぶん)()ばした。
(かれ)背中(せなか)(かべ)()()たった、その(ちか)くに(くすり)戸棚(とだな)()たった、その戸棚(とだな)中身(なかみ)(あふ)れた。薬瓶(くすりびん)たちは(ゆか)()ちて、ソレゾレのタブレットを()()した。少数(しょうすう)のガラス(びん)(こわ)れたが、プラスチック(びん)()ちを()つ、中身(なかみ)()()すだけ。
乱雑(らんざつ)のタブレットの(なか)(ぼく)(くすり)戸棚(とだな)からハサミも()ちたのは()かけた。相手(あいて)がまだ()(なお)れないうちに、(ぼく)はこのチャンスを(うば)いた、そのハサミを(ひろ)い、そして右手(みぎて)(にぎ)りしめて。
ちょうどハサミを(ひろ)った(あと)、その(おとこ)たちの一人(ひとり)(ぼく)右手(みぎて)(つか)まえるながら(かれ)右肩(みぎかた)(ぼく)()(はな)した。その推力(すいりょく)(ぼく)(うし)ろに()ばした、寝台(しんだい)()()たるに十分(じゅうぶん)(つよ)かった。(ぼく)手首(てくび)(にぎ)って、(かれ)(ぼく)()さえている。(かれ)(にぎ)りはキツすぎて、(ぼく)(にぎ)っているハサミを手放(てばな)しさせた。(ぼく)自由(じゆう)左手(ひだりて)(かれ)(かお)()()きでも()かなかった。
その(あと)(ぼく)(ぼく)(あし)がまだ自由(じゆう)してると()づいた。早速(さっそく)(ぼく)自分(じぶん)(あし)(かれ)(はら)()()り、そしてそのまま全力(ぜんりょく)(かれ)()()ばす。(かれ)はバランスを()ってみても、(ゆか)()らばれたタブレットはそれを(つら)くになった。結局(けっきょく)(かれ)後頭部(こうとうぶ)(かべ)にぶつけて、(ゆか)(ころ)んだ。
(かれ)(くる)しく(うめ)く、(あたま)(いた)いだろう。(かれ)(あたま)(かべ)とぶつけての(こえ)(ぼく)()(そと)(あわ)ててな足音(あしおと)から()らすほど(おお)きかった。早速(さっそく)(ぼく)(みぎ)にあったあのハサミに()()らした、あれを()ぐに左手(ひだりて)(ひろ)う、右手(みぎて)がまだ(いた)いし。
()(すみ)から、戸口(とぐち)()ってる(よっ)つの(おとこ)()かけた。(かれ)らは(うやま)()(ゆか)(たお)れた二人(ふたり)()(あと)(ぼく)(にら)んで。(いき)()ぎ、ハサミに(にぎ)りを()めて。左足(ひだりあし)はソット(ゆか)(ちか)づき、個体(こたい)地面(じめん)(もと)め、(かれ)らに突撃(とつげき)準備(じゅんび)をする。
「ほら!(かれ)(おさ)えろっ!!」
(きゅう)(そと)からの(こえ)(めい)じた。その(こえ)全員(ぜんいん)()()らしたけど、(ぼく)突撃(とつげき)のチャンスもくれた。ハサミを()って突進(とっしん)した。(ぼく)一人(ひとり)四人(よんにん)(たお)せるなんてなさそう。でもドサクサ(まぎ)れになら、(かれ)一人(いちにん)人質(ひとじち)するなら出来(でき)るかもしれない。
(かれ)らの一番(いちばん)(ちか)くにいるヤツまではあと三歩(さんぽ)、だが一歩(いっぽ)だけで(かれ)らは()づいた。(まえ)にあった(おとこ)(ぼく)攻撃(こうげき)()けた、だがその(あと)(かれ)(なに)もやらない。()わりに(ほか)(おとこ)(ぼく)手首(てくび)(つか)まえてともう一人(ひとり)(ぼく)(むね)()()まえた。(かれ)らは(ぼく)をベッドに()()まえた。
(かれ)二人(ふたり)(ぼく)(おさ)えたら、(ほか)二人(ふたり)(たずさ)えて、()(はな)すのももっと(むずか)しくなる。(ぼく)(ひだり)手首(てくび)(おさ)えている(おとこ)(ぼく)()()んだ、(ぼく)悲鳴(ひめい)()げた、そして(にぎ)りも(はな)った。そのハサミで(かれ)(なに)をするかが()からない、()えないから。最悪(さいあく)場合(ばあい)()(もう)けているが、(かれ)全員(ぜんいん)傷付(きずつ)けずにずっと(ぼく)(おさ)えてだけ。
この混乱(こんらん)(なか)で、(だれ)かが部屋(へや)(はい)ったのは()づいた。(かれ)部下(ぶか)(ぼく)()さえてながら、(かれ)(ぼく)(ちか)づいてる。首謀者(しゅぼうしゃ)か?(ぼく)をこんなメにさせた(ひと)か?
(ぼく)(のこ)(ちから)(すべ)てで、()()がって()た。(おどろ)いたが、(ぼく)(かれ)全員(ぜんいん)(こら)える(つよ)かった。ギリギリだけど、(ようや)(かれ)()()った。(かれ)(みどり)のスエーターを()(おとこ)だった。(かれ)見受(みう)けたそのあとから、(かれ)()がった、(とお)ざかっている。四人(よんにん)(おとこ)全力(ぜんりょく)(ぼく)(おさ)えてる、二人(ふたり)(ぼく)()を、もう二人(ふたり)(ぼく)胴体(どうたい)に。けれど(かれ)らの抵抗(ていこう)無駄(むだ)だった、四人(よんにん)(あわ)せた(ちから)より(ぼく)一人(ひとり)はもっと(つよ)かった。
大丈夫(だいじょうぶ)(あわ)てる必要(ひつよう)はない。」
(みどり)のスエーター(おとこ)はジワジワ(ちか)づく。(かれ)右手(みぎて)()がって(ぼく)(がく)(さわ)って。その(あと)(はな)(した)(うるお)(かん)(かん)じた、(なに)かの(えき)鼻穴(びけつ)から切歯(せっし)にダラダラ(なが)れる、そこでアレは()(あじ)()かった。
()()け!お(まえ)鼻血(はなぢ)()てるんだ!」
その(おとこ)はクッキリ()()かす。()わなくても、(ちから)徐々(じょじょ)いなくなる。すぐ(よわ)くなる、()ちないほど(よわ)い。四人(よんにん)(おさ)えも()くになる、でも(かれ)らの(ささ)えがないと、(ぼく)()ちない。
(ぼく)(ころ)ばす瞬間(しゅんかん)で、その(おとこ)(ぼく)(つか)まえた。(かれ)のちょっと(たか)いな姿(すがた)(ぼく)(かれ)(かお)()ると(すこ)見上(みあ)げて()けない。
(なに)があった?ここはどこだ?(ぼく)は―」
(よわ)いでも連続(れんぞく)質問(しつもん)()かせた。もういつまで意識(いしき)するのか()からないから。せめてその質問(しつもん)(いつ)(こた)えたらいいな。
安心(あんしん)して。お(まえ)色々(いろいろ)()りたいのは()っている。」
(こた)えて― チョッ― (ぼく)は… (だれ)?」
(やす)め。」
(かれ)(こえ)(ぼく)意識(いしき)のともにドンドン(とお)ざかってる。
(はなし)(あと)だ。」
「...」
...
また、(ゆめ)のない(ねむ)りに()ちてしまった、でも(やす)むのは不安(ふあん)()ぎて出来(でき)ない。(つぎ)()づくのは、(ぼく)はまたあの部屋(へや)(もど)った。(つくえ)()()がった、一度(いちど)二度(にど)(たた)いて()た。(こえ)感覚(かんかく)も、どっちもリアル(かん)じた。けれど(ぼく)(たし)かだ、この空間(へや)現実(げんじつ)じゃない。
「ここは(なん)だ?」
また質問(しつもん)(くわ)えた、まるで(いま)のあった問題(もんだい)(なや)むに()りない。この場所(ばしょ)孤独(こどく)(ぼく)安心(あんしん)(かえり)みるの機会(きかい)をくれた。自分(じぶん)(こた)えを(さが)してみた、でも真理(しんり)(つく)事実(じじつ)()りない。
(なに)があったんだ?どうして(ぼく)はここに()いたんだ?」
それが最初(さいしょ)質問(しつもん)
最後(さいご)(おぼ)える(こと)皮肉(ひにく)にも最初(さいしょ)(おぼ)える(こと)(あらし)(もと)目覚(めざ)ましてこと。
「でも(なん)であそこになった?クソッ!(なに)(おぼ)えてない!」
(あたま)(てのひら)()く、(かみ)をプリプリ()()いして。(なに)()らない自分(じぶん)(きら)い。
(ぼく)(だれ)なんだ?こんなメにあって(なに)をした?」
「おはよう、―――(くん)。」
「なに?」
また()こしている。(ぼく)一人(ひとり)じゃない。(だれ)かや(なに)かが(はな)している。それだけでもなく、その(こえ)(ぼく)名前(なまえ)()んだ、でもそれをまだ()こえてなかった。
(だれ)だ?」
(まわ)りを調(しら)べた、(ほか)(こえ)()った。自分(じぶん)(くる)ってないって(しん)じさせてくれ。
(だれ)だ?」
また(こえ)()た。でも()いではない。その(こえ)()ってる。それは(ぼく)(こえ)だ。
(こえ)(ひび)いたか?いいえ、そうはずない。その(こえ)確実(かくじつ)(ぼく)(こえ)だった、(ぼく)(こえ)がもう(ひと)つの(こえ)返事(へんじ)さした。(おぼ)えてないが、でもなんか(つぎ)(なに)()うのが()かるような。(ぼく)がこの部屋(へや)支配(しはい)してるか?この部屋(へや)(ぼく)支配(しはい)してるか?どっちなんだ?
(わたし)はこの計画(プログラム)担当者(たんとうしゃ)です。」
(きゅう)(みぎ)から(くろ)(かげ)(あらわ)れた。(かれ)(つくえ)()こうまで、姿(すがた)(まる)()えるになって(ある)(まわ)った。(かれ)はこの部屋(へや)とこの(まえ)にあった(ひと)(まった)別人(べつじん)だった。この(ひと)はちょっとだけ(せい)(たか)く、180CM(センチ)くらい。スーツを()る。(かみ)もキレイに逆毛(さかげ)した。
「じゃ、あなたはアインホーン博士(はかせ)ですね?」
(ぼく)(ぼく)心霊(しんれい)(こえ)が「(つぎ)はなにを()うか」()たりに(さっ)した。そこでこれは(ぼく)経験(けいけん)する(こと)ではなく、これは(ぼく)経験(けいけん)した(こと)だったと()づいた。未完成(みかんせい)でもこの部屋(へや)(ぼく)記憶(きおく)にあった場所(ばしょ)だった。でもどうしてもこのアインホーン博士(はかせ)(こと)も、(かれ)(ぼく)(こと)なんて()んだも、この部屋(へや)には(なに)があったのは(おも)()せない。
その(かげ)(すわ)っている(ぼく)(ちか)づいた、そして握手(あくしゅ)(そな)えた。イジイジで()()がった、(かれ)身振(みぶ)りを(かえ)す。(おどろ)いたが、(かれ)(かげ)だらけの()(さわ)った(とき)本物(ほんもの)()感触(かんしょく)(かん)じた。その感触(かんしょく)(たし)か、(かわ)と、(すじ)と、そして(ほね)と。(かれ)(にぎ)りは(つよ)い、でも(あきら)しい、なんか()きている(ぞう)握手(あくしゅ)しているみたい。
「で?上達(じょうたつ)はどう?」
「イヤァ、まだ基本(きほん)()()かるので。でも()りたいが、(ぼく)(なに)()たすべきでしょうか?」
(かれ)(はな)(とき)(ぼく)(なに)返事(へんじ)するかもう()かった。これはまるで、()らない過去(かこ)をまた経験(けいけん)するように。ここには(ぼく)(かれ)会話(かいわ)しているが、でも(ぼく)はただ傍観者役(ぼうかんしゃやく)、ただ()つめているだけ。
部下(ぶか)がまだ()ってないのか?」
(くわ)しくはまだ...」
「では、(なに)()りたい?」
「じゃ、最初(さいしょ)からでどうですか?」
最初(さいしょ)からかね...じゃ...」
(すこ)(かんが)()む、(なに)()いするか(かんが)えているみたい。
「キミは...この世界(せかい)をどう(おも)う?」
「はい?」
「キミはこの世界(せかい)(たば)ねている()いると(よわ)いが(わか)いと腕扱(うでこ)きを(あやつ)られてる世界(せかい)はどう(おも)う?」
「...」
しばらく沈黙(ちんもく)した。もしこれは(おも)()でも、(ぼく)はそう()かされてもしょうがない。
「そうすれば、()きじゃないな。」
「だろうな。(むかし)(わたし)(いのち)価値(かち)()(まえ)に、(ひと)(ころ)()ぎたんだ。」
「えっ?アインホーン博士(はかせ)戦士(せんし)だったのか?」
「そう。()がの過去(かこ)善事(ぜんじ)()えられない過去(かこ)なんだ。」
「...」
(つら)かった、(だれ)にも()れされない(つら)いさなんだ。」
「それで(なん)とかするって()めた?」
「あぁ。その(ため)にキミが必要(ひつよう)。」
(ぼく)が?」
「キミは時空移動(タイム・トラベル)()ってるでしょうね?」
「そうけど、(ぼく)はそれでなんだ?」
二年前(にねんまえ)(わたし)重要(じゅうよう)大事件(だいじけん)目撃(もくげき)した。アレはもう(わたし)にとって一番(いちばん)緊要(きんよう)体験(たいけん)だろう。」
(なん)事件(じけん)ですか?」
「それは(なが)(はなし)さぁ。でもアレはこの世界(せかい)変化(へんか)する方法(ほうほう)()つかるの()()けだ。」
「あっ。でも...(ぼく)とタイム・トラベルの関係(かんけい)(なん)でしょうか?」
正直(しょうじき)(ぼく)(まよ)った。僕達(ぼくたち)(なに)(はな)しているは(まった)(つか)めない。タイム・トラベル?アインホーン博士(はかせ)(ぼく)(なん)関係(かんけい)がある?アインホーン博士(はかせ)重要(じゅうよう)そう、(かれ)(ぼく)(なに)があったのか()ってるかも()れない。(かれ)(さが)せなきゃ。
「でもね、(いま)はハッキリ()えない。(わたし)(ただ)しのかはまだ()らないだからなぁ。」
「もしあなたが間違(まちが)ったら?」
「...」
また沈黙(ちんもく)した、今度(こんど)(かれ)(うつ)ろな(かお)(ぼく)(にら)めている。可笑(おか)しいなっ。(かげ)だけなのに、(かお)()くても、(かれ)(なが)みから(なに)かを(かん)じた。(なさ)けか?そうかもしれない、(いま)(ぼく)(かれ)(しん)じているような()がする。
「その選択(せんたく)(たたか)いはキミ次第(しだい)だ。(わたし)はあくまでその存在(そんざい)がまだ()からないドアを見送(みおく)りだけ。」
「ドクター・アインホーン?」
(きゅう)(うし)ろから(べつ)(こえ)僕達(ぼくたち)会話(かいわ)()る、アインホーンの()()らした。(かれ)()いた、(ぼく)(みぎ)のガランドウを(なが)めている、()から(はな)してるように。その(あと)(かれ)首肯(うなず)いた、そしてまた(ぼく)()く。
今日(きょう)私達(わたしたち)会議(かいぎ)はここまでだね。また今度(こんど)までなっ。」
それだけで、(かれ)(ぼく)(みぎ)(うし)ろへ(ある)(まわ)った。(かれ)(にら)めて、(ぼく)(かれ)椅子(いす)(うし)ろに()いたら(とお)ざかれてを()つけた。
ここで一人(ひとり)になった、(なに)をするか()からない(のこ)された。(ぼく)にとってさっきの(はなし)無意味(むいみ)だった。質問(しつもん)はまた(くわ)えた。(りょう)(てのひら)(かお)(つつ)む、(ひじ)(ひざ)に。()もギッチリ()じて、()けたら(すべ)てが悪夢(あくむ)だけだと(のぞ)んでている。
「ねぇ、―――(くん)
また(こえ)()こえた、でもアレはまた(べつ)(こえ)だった。今度(こんど)(こえ)(やわ)らかくて(いや)(けい)(こえ)。アレは(ぼく)()()んだ、でもいつもと(おな)じ、自分(じぶん)聴覚(ちょうかく)自分(じぶん)()()くを(ふさ)げていた。なんかその(こえ)(みみ)()れてた(こえ)だった、その(せい)(ぼく)()()けて、その(こえ)原因(げんいん)(さが)してる。
半回(はんかい)くらい(まわ)ったら、椅子(いす)からでかなり(とお)い、(しろ)(かげ)()ちながら()()れているを()つけた。不変(ふへん)(うご)きがなんか「お()で」って()んでた。(ぼく)(うたが)いを()せるながら()()がる。そのままでイジイジあの(しろ)(かげ)(ちか)づき(はじ)めた。
「ホラ!」
その(かげ)(うご)きが変化(へんか)した、その(かげ)(みぎ)から(ひだり)()()るを()まった、そして(たて)()()って(はじ)めた。
(ちか)づけるほど、その(かげ)適当(てきとう)輪郭(りんかく)()ける、アインホーン博士(はかせ)(かげ)のように、(いろ)(ちが)うだけ。その(こし)(なが)さの(かみ)()(うご)きを(したが)うに()れている。そしてその(かげ)はワンピースを()る、そして(まる)帽子(ぼうし)(かぶ)る。その(かげ)(おんな)()(かげ)だった。
(はや)く!」
(ぼく)(あと)15()くらいで、彼女(かのじょ)()()がったそして()げて(はじ)めた。距離(きょり)(ひろ)がっていくながら彼女(かのじょ)はクスクス(わら)っている、(ぼく)(つか)まえたいのように。
()って!」
彼女(かのじょ)(ぼく)()(はじ)めた(まえ)十分(じゅうぶん)距離(きょり)(つく)った。彼女(かのじょ)はあんまり(はや)(はし)れない、()いのもあんまり(つと)めない。だけど彼女(かのじょ)(かげ)(さわ)った(とき)彼女(かのじょ)(からだ)何十(なんじゅう)()()がると(そら)()えるカラスに()れた。そのビックリのせいで(ぼく)()めた手首(てくび)(かお)(かく)した。不思議(ふしぎ)に、彼女(かのじょ)(わら)(ごえ)()えてない。どこからかまだ()こえる。
「ホラ―――(くん)!」
彼女(かのじょ)(こえ)がまた()こえた。今度(こんど)()()けるすら、ムシするを()めた。でもなぜかどこにも()いたら彼女(かのじょ)はいつも(ぼく)(とお)(まえ)にあった。
「もういい!!」
大声(おおごえ)()しで(いか)りを(はな)った。だけどそのせいで、この空間(へや)(そら)(そこ)(まわ)(はじ)めた。(くろ)(そこ)(まえ)(うつ)す、そして灰色(はいいろ)(そら)(うし)ろに(うつ)す、拠点(きょてん)交換(こうかん)する。
この部屋(へや)班列(はんれつ)変化(へんか)(おそ)れてる。もうここから()したい。四回(よんかい)くらい(ぼく)出口(でぐち)やあの椅子(いす)(つくえ)()つからず(さが)した。五回(ごかい)(まわ)ったわ(きゅう)に、あの(しろ)(かげ)()つけた。でも今度彼女(こんどかのじょ)逆様(さかさま)()らした、(うつ)ろの(かお)(ぼく)(にら)めている。
「オソ~イ。」
「なっ―」
彼女(かのじょ)(ぼく)(がく)()れた。彼女(かのじょ)(さわ)りは(ぼく)(ひろ)んちゃった、(まぶた)まで()まってた。彼女(かのじょ)(さわ)りがこの空間(へや)破壊(はかい)する、その(さわ)感触(かんしょく)はすぐ(ぼく)(まわ)りからの破裂(はれつ)爆風(ばくふう)(わす)れていた。この空間(へや)(なに)があったのかもう()からない。その(あと)(ぼく)気絶(きぜつ)した。(ゆめ)のない(ねむ)りに()つしまった。(とき)()ぎる、世界(ちきゅう)(まわ)る、(すべ)ては(ぼく)意外(いがい)に。
fsc
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